【論文紹介】体臭と食べ物の関係とは? | Minimal Health

【論文紹介】体臭と食べ物の関係とは?

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先日、外を何kmか歩いていると夏日だったためたくさん汗をかきました。いつもならば短時間では汗をかいただけで自分が汗臭いと感じることはあまりないのですが、その日は自分でも明らかに「酸っぱい」ような汗臭さを感じました。

振り返って原因を考えてみると、前日に普段と比べて全然野菜を摂らなかったことが唯一思い当たる点でした。仮にたった1日の食生活の変化で体臭が変化してしまうとなればそれは興味深いと思い、論文を検索してみました。

同じ疑問を持った方の役に立てば幸いです。

論文① 食生活の質と男性の匂いの魅力の関係

Diet quality and the attractiveness of male body odor(Abstractのみ)

結論:
果物と野菜の摂取量が多いことは、汗の強さとは無関係に、より心地よい香りの汗と有意に関連していた。

自己申告による食事データからは、脂肪、肉、卵、豆腐の摂取量が多いほど良い香りの汗をかき、炭水化物の摂取量が多いほど匂いが強く不快な汗をかきやすいことがわかった。

実験方法:
果物と野菜の摂取量を、皮膚分光光度法(食事によるカロテノイド摂取量の評価)と食事頻度の聞き取りの両方で評価し、より良い香りの汗と関連するかどうかを検証した。
男性参加者は、腋窩の汗のサンプルと食事の情報を提供し、女性参加者はこれらのサンプルを感情、質的な側面から評価した。

・「これらのデータは、黄色くてカロテノイドが豊富な肌がより魅力的であるとされる顔の判断と類似しています。」
→顔の評価に関する研究と結果が一致していることから、野菜と果物の摂取が重要であることは確実か。

論文② 赤身肉が体臭の魅力度に与える影響

The Effect of Meat Consumption on Body Odor Attractiveness

結論:
非肉食の方が、各女性から見た各男性の体臭の魅力度について「より魅力的、より心地良い、より強烈でない」と有意に判断された。

実験方法:
男性17名が、「肉食」または「非肉食」の食事を2週間続け、女性30人によって、「快感(心地よさ)、魅力、男性らしさ、強度」が評価された。1ヵ月後、同じ被験者で、それぞれ前とは逆の食事をして、同じ手順を繰り返した。

※ここでの「非肉食」とは赤身肉を摂らないだけであって、動物性タンパク質を取らないという意味ではない(チーズなどで摂取)

他にも論文に記載されている情報で面白いものがたくさんあったのでピックアップします。

  • 体臭の特徴はある程度遺伝的に受け継がれる。
    → 親と子の体臭は一致させることはできるが、血縁のない配偶者とは一致させることができない。(同じ住環境という条件をコントロール)
    → 一卵性双生児の匂いは離れて暮らしていても偶然より高い確率で一致させることができる。
  • 匂いの好みは主要組織適合性複合体(MHC)の遺伝子と相関している。
    女性はMHCの異なる男性の匂いを最も魅力的だと評価することが判明している。
  • 体臭は遺伝的要因に限らず、心理的・生態学的要因にも影響を受ける。
    例えば、女性であれば月経周期によって変化し排卵期前後に魅力度がピークに達することが繰り返し報告されている。
  • 匂いの強さと男性らしさの間には、有意な正の相関が見られる。
  • 匂いの強さと気持ちよさや魅力の評価の間に負の相関がある
  • (推測ではあるが)脂肪族酸の量や比率の変化が原因ではないかと考えられる。
    腋窩(わきの下)には乳白色の分泌物を出すアポクリン腺が多数存在し、新鮮なアポクリン分泌物は無臭であるが、腋窩の微生物叢によって速やかに臭気のある分解物に変換される。コリノバクテリアAは脂肪酸を短い脂肪族酸に代謝する。これが事実であれば、臭気の変化と肉の脂肪率との間に相関関係があることが予想される。

まとめと考察

野菜と果物の豊富な摂取は短期的にも長期的にも健康状態について重要な役割を果たす。

・肉の摂取については、一部矛盾する内容が見つかったが、毎日赤身肉を摂取するようないわば異常・過剰な食事では悪影響が出るが、肉も含めて適度なタンパク質摂取は良い影響が見られる。

→個人的な推察にすぎないが、「継続的に同種・多量のタンパク質を摂取する」という環境は狩猟採集時代の生活を想像するに起こりづらく、「断続的・不定期に多種・少量のタンパク質を摂取する」方が自然な状況に近く人間の体に適合的なのではないかと思う。

他にも関連する論文

カロリー制限(断食)と女性の体臭の関係

The effect of complete caloric intake restriction on human body odour quality(Abstractのみ)

結論:
平常時およびカロリー摂取制限時と比較して、食物摂取を再開した後の方が、体臭がより心地よく、より魅力的で、より強烈でないと評価されることが分かった。
平常時とカロリー摂取制限時に採取した体臭サンプルの間に「快感、魅力、強度」の違いは見られなかった。

実験方法:
健康な女性ドナーから匂いのサンプル(コットンパッドを両脇に固定して12時間装着)を3つの条件で採取。
i) 普段の食事の時
ii) 48時間の完全なカロリー摂取制限(飲料水を提供)の後
iii) カロリー摂取を再開してから72時間後。

男性評価者により「心地よさ、魅力、女性らしさ、強さ」について評価された。

食事とは関係ないが興味深いもの

Human body odour, symmetry and attractiveness(体臭・対称性と魅力度)

→顔の魅力と体臭の魅力の相関、女性の月経周期と匂いの魅力度に関する知覚の変化

Male steroid hormones and female preference for male body odor(男性ステロイドホルモンと女性の男性の匂いに対する好みの関係)

→コルチゾール濃度と魅力度の相関、女性の月経周期と男性に対する魅力度の評価の変化

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